縁起　空

たとえ
どのような境遇に　なろうとも
この命
力の限り　生きていく
ご縁をいただき　瞬間瞬間が　ある限り
身の丈に応じ　精いっぱい生きていく

「見ずや君
あすは　散りなん花だにも
力の限り
ひと時を　咲く」（九条武子）

生き死にする命は　縁起している命

すべてのこと　すべてのものは
原因や　さまざまな条件　ご縁が　互いに関係しあい
「縁って起きている」

すべてのこと　すがた　かたちは
縁って起きているから「空（くう）」
空とは「縁起」している　ということ
固定したすがた　かたちは　どこにもない
執われや悲喜などが　まぎれ込む余地は　ない
得るものがない　失うものもない

「偉大なる　一つのことわりが　あるだけ
ただ　真実が　あるだけ」（中村元）

天も地も水も　人も　生きとし生けるもの
みな　等しく
時々刻々に変化し　縁起している
縁起　空　無常
この　ことわりの中に　在る

一日でもいい
食事を断って　働いてみる
空腹が　身にしみる
体にも頭にも　力が入らず　へたりこむ
夕食の　なんと美味いこと
生きかえる
ホッ　と息をつき
みるみる活力が　身にしみわたる
血流のぬくもりが　手足を満たす

すべてのこと　すがた　かたちは
縁って起きている　縁起しているから　空
空だから　縁起しているから　すがた　かたちであり得ている
固定したすがた　かたちは　どこにもない

縁起　空　無常であることに
うながされ　よび覚まされ
いっさいの計らい　執われから　解き放たれて　自由になれる時
日常の　身も心も　脱落し
私という構えも　すっぽり抜け落ちている

あるがままに
すべてが　一つになって　いて
寸分の対立も　なく
活き活きと　光り輝き
満ち満ちて　いる

自他の対立感や　ある無しの
世俗の分別苦から　解き放たれて
執われもなく　何もなく
おのずからなる　み手のうち
どこまでも障りなく　広大無辺
ただ今の　ここ

「この生死は　すなはち佛の御いのちなり」（道元禅師）

生も　老いも　病も　死も
変化している　縁起している
その　ことわりの中に
みな　在らしめられている
そのこと自身は
悲しいとも　うれしいとも　なにも言っていない
余計な思いや計らいを　加えない
いっさい　入る余地は　ない
その時　迷いを遠く離れ　平安に入る